Yusei Miyazaki
多発性硬化症・視神経脊髄炎・MOG抗体関連疾患専門家


Yusei Miyazaki
多発性硬化症・視神経脊髄炎・MOG抗体関連疾患専門家


アンケート調査


 従来、病状評価や治療の目標設定は医療者側が行なっていました。例えば、病気が治った、治療が順調に進んでいる、寿命が何年伸びたなど医療者側が判断していました。これに対して近年は、患者さんが症状や現状をどのように受け止めているかという評価も、病状の一部と捉えて治療に応用する流れがあります。治療薬の進歩で我々医療従事者の観点からMSは非常にコントロールが良くなったと感じますが、今後は患者さんがどのように感じているかということも評価・治療の対象にすべきと考えています。北海道医療センターでは以下のアンケート調査を行い、患者さんの病気に対する主観的な評価を治療に応用しようとしています。以下の検査は研究として行っており、検査を受けていただく前に同意書にサインをいただいています。

疲労重症度尺度(Fatigue Severity Scale, FSS)

 疲労に関する9つの質問からなる調査票です。合計9〜63点で,疲労の程度が強いほど点数が高くなります。一般的に36点以上で強い疲労があると評価します。

ベック抑うつ尺度(Beck Depression Inventory II, BDI-II)

 「うつ」に関する21の質問からなる調査票です。合計0〜63点で、うつの程度が強いほど点数が高くなります。一般的に21点以上で鬱状態の可能性があると評価します。

多発性硬化症歩行尺度-12(MS Walking Scale-12, MSWS-12)

 歩行に関する12の質問からなる調査票です。合計12〜54点で、歩行障害の程度が強いほど点数が高くなります。これまで正式な日本語版が存在しなかったために、英国プリマス大学に許可を得た上で私が日本語版を作成しました。2023年1月から2024年1月の間に当院のMS患者さんにご協力いただいて日本語版の検証作業を行い、その結果を論文投稿中です(2024年4月現在)。多くの日本人MS患者さんのお役に立てれば嬉しいです。

生活の質(Functional Assessment of MS, FAMS)

 いわゆるQOLと呼ばれ生活の質を評価するものですが、例えば「生きがい」や「経済状態」など広い意味でのQOLではなく、健康状態に関連した領域のみを評価します。このようなQOLを健康関連QOLと呼びます。FAMSはMS患者さんの健康関連QOLを調査するために作成された調査票で、7つの分野(活動性、症状、精神的状態、一般的満足度、思考と疲労、社会・家族との関係、その他心配な点)、合計58の質問から構成されています。最高得点は176点で、QOLが高い(良い)ほど点数が高くなります。

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