Yusei Miyazaki
多発性硬化症・視神経脊髄炎・MOG抗体関連疾患専門家


Yusei Miyazaki
多発性硬化症・視神経脊髄炎・MOG抗体関連疾患専門家


MSの方の通院間隔


 MSを持ちながらも、なるべく普通の生活を送りたいという気持ち、みなさんもお持ちだと思います。育児をしたり、仕事を続けたり、趣味を楽しんだりすることを大切にしている方も多いですよね。病気がこれらの活動を妨げないようにする考え方を「ノーマライゼーション」と呼びます。我々医療者の役割はこのノーマライゼーションのお手伝いをすること、つまり、病気を持っていても、そうでない方と同じような生活ができるように支援することです。このノーマライゼーションを実現する一つの方法として通院負担の軽減について考えてみましょう。

通院間隔に影響する要因

まず、通院間隔に影響する要因は主に3つあります。

1. 医学的な理由

 治療のために必要な検査や処置があります。たとえば、定期的なMRI検査や血液検査はMSの診療では必須です。また、治療薬によっては定期的に注射を受ける必要があります。これは残念ながら避けられない部分です。

2. 医療制度の制限

 現在の日本の医療制度では、処方薬の最大日数が3ヶ月と決められています。そのため、どんなに通院間隔を長くしても、少なくとも3ヶ月ごとには病院に来る必要があります。ただし、オンライン診療を併用することで、通院の負担を減らすことができるかもしれません。

3. 医療費の負担

 MSの治療薬は高額なものが多く、医療費の負担を少しでも軽減する方法についても考える必要があります。たとえば指定難病における医療費助成の「高額かつ長期」という制度を利用すると、月の医療費総額(自己負担額ではありません)が5万円を超える月が年間6回以上あると、その翌月から医療費の負担額が軽減される仕組みがあります。この制度により、通院の頻度が一定以上である場合に医療費負担が軽減されるのです。具体的には、2ヶ月ごとの通院を続けることで、負担額を少なくすることが可能になります。

どの通院ペースが合っているか?

 多くの患者さんは2ヶ月ごとに通院しており、このペースだと高額かつ長期の制度を利用して医療費の負担を最小限に抑えることができます。しかし、人によっては「少し医療費が高くなっても、通院回数を減らしたい」と感じる方もいるかもしれません。このような選択は、みなさんの価値観や生活の状況に合わせて考えても良いと思います。
 例えば、以下の図のように1ヶ月の支払い限度額が¥10,000の方の場合に、高額かつ長期が適応されると限度額が¥5,000に減額されます。高額かつ長期を維持するために2ヶ月ごとに通院すると、年間の負担額は¥30,000になります。一方で、高額かつ長期を取らずに3ヶ月ごとに通院した場合(処方の最大日数は3ヶ月ですので)、年間の負担額は¥40,000となります。この¥10,000の差をどう感じるかは人により異なると思います。

 このように、2ヶ月ごとの通院であれば、1回の負担額が少なく済むものの、年間にかかる通院回数が多くなります。一方で、3ヶ月ごとの通院であれば、負担額は少し増えるものの、通院の手間を減らすことができます。この選択は、みなさんご自身で無理のない範囲で決めていただけたらと思います。

 なお、一般の負担額と高額かつ長期の負担額はみなさんの収入によって異なります。ご自身の負担額に関しては難病情報センターHPでご確認お願いいたします。

オンライン診療の活用

 また、オンライン診療を活用することで、さらに通院の負担を減らすことができる可能性もあります。例えば、下の図のように半年に1回は病院に来てMRIや採血などの必要な検査を受けていただく一方で、その間の診察をオンラインに置き換えることができます。オンライン診療をうまく利用することで、通院間隔を調整しながらも安全に治療を続けることが可能です。
オンライン診療に興味がある方は、ぜひ主治医に相談してみてください。

最後に

 私たちの目標は、MSを持つ方ができる限り普通の生活を送れるよう支援することです。通院間隔を調整したり、オンライン診療を取り入れることはそのための一つの手段です。ただし、安全面を最優先にしなければならない場面もありますので、その際は医師の指示に従っていただけると助かります。
皆さんが少しでも快適な生活を送れるよう、これからもお手伝いしていきたいと思います。何か気になることや相談したいことがあれば、どうぞ遠慮なくご連絡ください。


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